CLINIC INTERVIEW

2016.10.18

歯科治療の中で多くを占める歯周病治療。
クリニックインタビュー第1回目は歯周病のスペシャリスト、現・日本臨床歯周病学会の会長をされていらっしゃる二階堂歯科医院(東京都中央区)、二階堂雅彦先生です。

改めて歯周病にフォーカスしてお話をお伺いしたところ、海外の歯科治療やエビデンス等と合わせて今後の歯科医療現場において重要である点が浮かび上がってまいりました。
また、「患者さまに計画通り定期的に来院してほしい」と悩まれている歯科医療従事者の方も多いかと思います。今回は患者さまとの長く付き合っていく秘訣と二階堂先生がすべての歯科医療従事者に伝えたいメッセージを熱く語っていただきました。

歯科治療、歯周治療で大事にされていることがありますか?

はじめに、私が日本臨床歯周病学会の会長に就任して伝えたいと考えているメッセージが2つあります。

  1. 歯周病は静かに進んでいく病気ということ。
  2. 人によってリスクが違うこと。

メディアでもよく、成人の8割は歯周病などと言われることがありますが歯周病は人によって短期間で重度になる方もいれば、軽度のまま悪化しない方もらっしゃいます。誰もかれもが同じスピードで悪くなるわけではありません。

1970年頃、スリランカにおいて歯周病の成り立ちを解明する研究が行われました。その内容とは歯科治療や歯磨きなどの人為的な口腔ケアを一切行われない場合には、歯周病はどのように進行するかというものです。研究対象者はスリランカの山中に住む、お茶摘みに従事していた人々です。

彼らには歯磨きを行う文化がなく、歯科医師もいない環境だった為、人為的に一切手を加えられない口腔状態のまま暮らしていました。研究者は15年にわたりその研究を続けその結果、同じ生活をしていても人によっては歯周病の進行が大きく異なることがわかったのです。

全体の1割は歯磨きをしていないにも関わらず、歯肉炎にはなるものの歯周病には至りません。

また、全体の8割は歯周病がゆっくりと進行しました。そして、残りの1割ですが、病状が急速に進行し、20代で歯が抜け始め40代ではすべての歯を失ってしまいました。

同じような生活環境にも関わらず、この差があるのは偏った食生活でしたり、たばこ、親の遺伝等のリスクファクターが原因と考えられます。

歯周病に関しては皆さんご存知の通り重度になるまで意外と噛めて痛くありません。そして腫れないことが多いです。私たちは、歯科治療を行う段階で患者さまが重度になる傾向があるかどうかを見極めないといけません。

また、患者さまが歯周病の進行に気がつかないのは、他人と比較することがないため、自分が世間一般の歯の健康レベルのうち、どのあたりにいるかが把握しにくいことも原因のひとつです。毎日のことだと当たり前で痛みや噛めないという不自由さを感じるまで歯科医院に来ない方は多数います。

最近では10代20代等若くして、重度の歯周病の方が増えてきました。若い方が歯周病で悩んでいるのをみると悲しくなってしまいます。

私は患者さまとお話する時に、歯周病は慢性疾患で一生付き合っていかないといけませんということをしっかりお伝えしています。

歯科治療で来られた患者さまは、一度治ったと思うと治療を辞めてしまう方が沢山いらっしゃいます。患者さまには続けて定期的に健診にいらっしゃることが大事という話をしています。その為には歯周病がどういう病気か患者さま自身に理解していただくことが大事です。

例えると高血圧や糖尿病のように慢性疾患の病気と同じです。糖尿病、高血圧の人は病状が安定し続けても病院に通い続けると思うのですが、歯周病に関してもずっと付き合っていくような認識を持ってほしいと考えています。

抗菌性洗口液リステリン®に関してお聞かせください。

マウスウォッシュを使う人はどちらかと言うと、普段から歯磨きもフロスもしてくれるデンタルIQの高い方だと思います。

リステリン®に関しては海外では歯科医療現場を含め、多くの方が使用しています。最近ではノンアルコールのものも発売され使いやすくなったと感じています。

また一般向けの洗口液は効果がないという方もいらっしゃいますが、リステリン®に関しては実際の臨床データやエビデンスがあることも素晴らしいです。

リスクが高い方や、本当に使用していただきたい方に使っていただけていないのが現在の課題かと思います。

デンタルケアを広めていきたいと思うと同時に、日本における歯に対する意識の低さを感じます。欧米の方は非常に意識が高いです。オーラルケアに関してフロスやマウスウォッシュを7歳位から親が指導して使うことを始めていく傾向に比べ、日本は成人してから自ら使う方が多い傾向にあります。

アメリカ人は価値観として白い健康な歯を大事にしています。

一方日本人は見た目のおしゃれは気を使いバックや洋服等に気を使う傾向が強いです。海外から来た歯科医師にも、社会的地位をお持ちの方でも歯が悪い方が多いこと指摘されます。近年、オーラルケアも注目されている中で歯がきれいなことが大事という意識がさらに強くなっていってほしいです。

歯周治療をしていく中で先生が考えていること、
気をつけている点など。

常に抜歯というオプションがあるかと思いますが、すぐに歯を抜くという結論を出さないで、何か理由がある、何処かに見過ごしていたことがないか等考えていく姿勢を常に持っていくことが大切だと考えています。

近年では歯科医療の進歩はめざましいものがあり、様々な最新機器、術式、歯科材料が紹介されています。抜歯をする場合もデンチャーかインプラントか等、幅広い選択肢の中より、最善の処置方法を患者さまのニーズに合わせて選択できるようになりました。

メインテナンスの面に関しましてはカリエスのチェック、クリーニング、ホームケアの指導等、衛生士からのサポートがとても重要だと考えています。一度治療したことで安心させてしまわないように、メインテナンスを大事にしていくことを伝えることが重要です。

当院ではお付き合いの長い患者さまが多くいらっしゃいます。一緒に年をとっていくと言うとおかしいかもしれませんが、長く通い続けてくれることは嬉しいことです。患者様は歯周病のことを理解し、私を信頼してくれていますので、指導したことは必ず実行してくださいます。

今に至るまで歯科治療をしていく中で、自分の選んだ治療戦略で治っていくか不安だったこともありますし、周りからは非難をあびたこともあります。ですが長く治療を続けてくださった結果としてご本人の歯が残り、喜んで頂けていると思うとやりがいを感じます。

今日まで積み重なって出来た患者さまとの関係性は自分にとっての宝物です。
これからも学び続け、長期的成功をする為に歯周治療に立ち向かう姿勢が必要と考えています。

改めて歯周病の難しさを学ばせていただきました。治療をしていく中で患者さまとの信頼関係が築けることで治療の選択肢も幅広くでき、患者さまの未来を守れるのかもしれません。

二階堂先生ありがとうございました!

二階堂 雅彦先生

プロフィール
東京歯科大学卒業
タフツ大学歯学部歯周病学大学院修了
アメリカ歯周治療専門医
アメリカ歯周病学ボード認定医を取得
日本臨床歯周病学会 指導医

二階堂歯科医院
歯周病・インプラントクリニック

〒103-0027
東京都中央区日本橋3-5-12日本橋MMビル4F
TEL:03-3516-1688

診療時間(予約制)
【午前の部】AM9:30~PM1:00
【午後の部】PM2:00~PM6:00
(土曜はPM5:00まで)
【休診日】毎週木・日曜日
(都合により休診もあります)

http://www.perio.ne.jp/

日本人はこうして
歯を失っていく

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