ブレース・リテーナー装着

矯正装置やリテーナー装着時の口腔衛生

矯正装置やリテーナーのクリーニング

矯正治療を受けている場合、治療がすでに完了しているのであれば、歯、矯正装置、およびリテーナーを清潔な状態に保つことが特に大切です。歯垢が付着する表面が大幅に増えるため、歯磨きとフロス使用を普段とは異なるやり方で行う必要が生じることがあります。

矯正治療を受け始めた患者は、治療開始後わずか3か月で口内の歯垢バイオフィルムの量が大幅に増えます(Marda, 2018)。矯正装置とリテーナーに歯垢が付着しないようにすることは不可能なため、歯や歯肉と同じように十分にクリーニングして、蓄積した歯垢が石灰化して歯石になったり、シミを悪化させたり、口臭やむし歯などのさらなる問題を引き起こしたりするのを防ぎましょう。

矯正装置の周囲に蓄積した歯垢を取り除くことが非常に重要である理由

矯正装置を外したばかりの人に歯肉の問題があり、歯の表面に大きな白い斑点が付いているのに気付いたことはありませんか?あるいは、歯列矯正器具を外した後で充填が必要になったという体験談を聞いたことはありませんか?

矯正装置がむし歯を引き起こすわけではありませんが、むし歯を引き起こす細菌の住処になります。ブラケットの端の部分や、ブラケットを固定している接着剤の周囲に歯垢がたまると、歯肉に問題が生じるリスクが高まります。また、歯垢は歯のエナメル質を浸食します。クリーニングを怠ると、この部分が再石灰化することがあり、むし歯のプロセスが急速に進行します。矯正装置やリテーナーを常に清潔に保っている人は、歯肉に問題が生じたり、むし歯になったりする可能性が少なくなります。

常備して使用すべきもの

電動歯ブラシ — 電動歯ブラシを使うと、歯磨きを効率よく行うことができ、特に矯正装置の周囲をきれいにする手先の器用さに欠ける子供の患者にメリットをもたらします。各ブラケットの狭い隅の部分を磨くことで、この届きにくいエリアのシミを最大限に除去できます。電動歯ブラシを4週間使用すると、歯列矯正治療を受けている患者の口腔衛生が大幅に改善されます(Erbe, 2018)。

先端が房状になった歯間ブラシ — 歯磨きをした後で、房状になった歯間ブラシを使い、歯列矯正ワイヤーのすぐ下の歯の表面をもう一度磨きます。各ブラケットの側面は念入りに磨いてください。ブラケットとブラケットの間や歯肉に近い部分は、歯肉の腫れや厄介な歯肉の問題が起こらないように優しく磨きます。

フロス通し器またはウォーターフロッサー — 舌側リテーナー(下の前歯の裏側に装着するもの)などの固定式器具や歯列矯正ワイヤーには、歯ブラシが届かない表面をきれいにするための特別なツールが必要です。フロス通し器を使い、目的の部分にフロスを通して歯に当てて、歯肉の縁のすぐ下まで上下に動かしてクリーニングします。または、一定の圧力で噴出する水の力でブラケット、ワイヤー、歯、および歯肉から歯垢を洗い流すウォーターフロッサーを使用しましょう。

フッ素入り歯磨き — 市販または処方箋販売のフッ素入り歯磨きは、長期にわたって歯垢にさらされた歯のエナメル質を再石灰化するのに役立ちます。これは、むし歯の発症と歯肉からの出血のリスクを低下させることに加えて、矯正装置を外した後の気になる 「白い斑点」を避けるうえで非常に重要なステップです。

殺菌効果があるマウスウォッシュ — 毎日の歯磨きの後で、リステリン®などの殺菌効果があるフッ素入りのマウスウォッシュを使って口をすすぎます。これにより、歯と歯の間やブラケットとワイヤーの周囲など、歯ブラシが届かなかった可能性のある部分の歯垢を取り除き、ミネラル分を補給します。

歯科装置の洗浄剤 — テレビでよく見かける発泡性の入れ歯洗浄剤を覚えていますか?こうした洗浄剤は、取り外し可能な歯列矯正用リテーナーなど、その他の歯科装置にも優れた効果があります。室温の水に錠剤を1つ入れて、その水にリテーナーを浸します。すると、前の日からたまった沈着物が柔らかくなります。ブラシでリテーナーをそっと磨き、水で洗い流して、適切な方法で収納します。

歯肉炎と矯正装置

矯正装置を付けている人によく見られるもう1つの問題は、歯肉炎や歯肉疾患の発症です(Cerroni, 2018)。歯肉と矯正装置の間の部分はあまりきれいにできないことがあるため、組織が腫れたり、赤くなったり、出血したりしやすくなります。そうなる前に、歯肉の縁に沿ってしっかりと歯磨きし、毎日フロスを使用して、リステリン®などの殺菌効果のあるマウスウォッシュを使うことが極めて重要です。

取り外し可能な保定装置の適切なクリーニング

矯正装置を外した後も、毎日、口内にリテーナーを付けます。器具に歯垢が蓄積し、装着していない間に石灰化することがあるため、常にきれいにしておく必要があります。歯垢が石灰化すると、口臭や感染症などの問題が起こりやすくなります。

リテーナーのクリーニングには別の歯ブラシを使うのが最善です。なぜなら、ワイヤーやギザギザの先端がブラシの毛に微小な傷を付け、その結果、傷んだブラシが歯と歯肉を刺激する恐れがあるからです。

前述のとおり、市販の洗浄剤の中にリテーナーを浸して沈着物を柔らかくし、ブラシでしっかり落として、水できれいに洗い流してから、また装着するときまで安全な場所に保管します。

固定式(接着式)リテーナーのクリーニング

固定式リテーナーは、通常は下の前歯の裏側、そして時には上の前歯の裏側にもセメントで長期間固定されるため、きれいにするのが少々厄介です。

フロス通し器を使い、ワイヤーと歯の間にフロスを通して、ワイヤーの下のリテーナー接着部分と、それぞれの歯の歯肉の縁のすぐ下の部分をフロスでそっとクリーニングします。フロスの使用が非常に困難な場合は、ウォーターフロッサーが効果的な代替手段となります。

リステリン®などの殺菌効果のあるマウスウォッシュを毎日使用すると、リテーナーの周囲に蓄積した歯垢を除去し、付着を防止するのに役立ちます。

かかりつけの歯科医による定期的な歯科検診を受ける

矯正装置のために6~8週間ごとに歯科矯正医の診察を受けている場合でも、少なくとも6か月ごとに歯科検診とクリーニングを予約してください。歯列矯正治療を受けている患者の中には、さらに短い頻度でクリーニングを行うと効果が高い場合もあります。

かかりつけの歯科医師または歯科衛生士は、脱灰と歯肉炎の初期兆候がないか調べます。幸運なことに、脱灰と歯肉炎は、いずれも早期に発見して適切な口腔衛生を実行すれば解決できます。ご自分の歯と歯肉がどれほど健康であっても、少なくとも6か月ごとに歯科検診を受けるようにしてください!

References

Marda, A., et. al.; Evaluation of changes in cariogenic bacteria in a young Moroccan population with fixed orthodontic appliances.; Int J Dent; Nov 2018.

Alp, S.; Baka, Z.; Effects of probiotics on salivary Streptococcus mutant and Lactobacillus levels in orthodontic patients.; Am J Orthod Dentofacial Orthop.; Oct 2018.

Erbe, C.; et. al.; A randomized clinical trial to evaluate the plaque removal of an oscillating-rotating toothbrush…; Angle Orthod; Dec 2018.

Cerroni, S.; et. al.; Orthodontic fixed appliance and periodontal status: a systematic review.; Open Dent J.; Sep 2018.