矯正治療と歯肉疾患

矯正治療と歯肉疾患

矯正治療を受けている患者は、歯肉疾患とむし歯を発症するリスクが高まります。矯正装置を付けると、歯垢がたまりがちになり、歯肉疾患とむし歯を引き起こします。

矯正治療を受けると、患者がむし歯と歯肉疾患を発症するリスクが高くなるのはなぜでしょうか?

矯正装置を付けている人の口内の衛生状態が悪くなると、歯のエナメル質に白斑病変が生じることがあります。この病変が生じるのは、歯垢が糖分と作用しあって酸を作り出すからです。これが表面の脱灰を引き起こし、歯の表面にくすんだ白色のシミができます。何も対処せずにいると、この病変はやがてむし歯につながることがあり、広範囲に及ぶ歯科処置が必要になります。

また、歯肉炎も矯正治療中によく見られる問題の1つです。矯正装置やワイヤーを装着しているため、歯磨きとフロスの使用が難しくなります。矯正治療を受けている患者は、フロスの使用を避けたがる場合もあります。なぜなら、時間がかかって面倒だからです。フロスの使用を怠ると、歯と歯肉に歯垢が蓄積することになり、歯肉炎につながります。

矯正装置を付けていると、口内の細菌の数が増加するだけでなく、細菌叢の性質も変化します1,2。矯正治療を受けている間は、むし歯を引き起こす細菌であるミュータンス連鎖球菌と乳酸菌の絶対数が増え、比率が大きくなります3。 矯正治療中は、アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンス4,5,6やカンジダ菌5など、その他の微生物も歯肉の炎症に関与します5。

矯正装置を付けている方によく見られる口腔衛生の問題をリストにしましたのでご確認ください。

  • 歯垢の蓄積が進行する。
  • 歯肉疾患のリスクが上昇する。
  • むし歯を発症するリスクが上昇する。
  • 口臭 – 口内で歯垢と食べ物のかすが蓄積した結果として生じます。
  • 問題を引き起こす微生物の数が増加する。
  • 口内から食べ物のかすを取り除く舌の機能が制限される。
  • 歯磨きとフロスを使用しづらい。
  • 矯正装置の周りにシミができる。
  • 唾液のpH値が低下し、口内環境の酸性が強くなる7。

プラーク・コントロールは、歯と歯肉、そして矯正装置を良好な状態に保つうえで不可欠です。矯正装置やリテーナーを付けている方は、以下の手順に従って良好な口腔衛生を維持してください。

  1. フッ素入りのマウスウォッシュを使って歯磨き、フロス、口のすすぎを行う習慣を、毎日欠かさず実行する。

  2. 歯科矯正医が勧める歯磨きの方法に従う。

     

Refrences

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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27536324