ブレース/歯肉疾患への対処

矯正装置を付けている場合の歯肉疾患への対処法

矯正装置と歯肉の問題:すべての患者が知っておくべき事柄

患者が矯正装置を装着する前に、歯科矯正医または歯科医は、患者の歯と歯肉が治療を行っても問題のない健康な状態であることを確認します。しかし、矯正治療が開始されると、多くの患者は歯肉の問題が生じ始めたことに気付きます(Zhao, 2018)。

症状としては、軽い炎症、赤み、または腫れが歯肉の縁に沿って生じ始めます。その後まもなく、歯磨きをしたりフロスを使ったりすると歯肉から出血するようになります。初期のうちに対処しないと、この軽度の歯肉炎は悪性の歯肉疾患に進行することがあります(Cerroni, 2018)。

歯肉炎と歯肉疾患を引き起こす原因

歯肉炎は、細菌を含んだ歯垢が歯と歯肉(歯肉)の縁の部分に長期間付着することによって起こります。これは、皮膚にできた傷を定期的に消毒しなかった場合と同様で、赤み、敏感さ、または感染症が生じます。

歯肉炎は適切な口腔衛生によって改善が可能ですが、重度の歯肉疾患は恒久的な骨量の減少と歯の喪失を引き起こすことがあります。特に矯正装置を付けている場合は、初期のうちに症状を把握することが極めて重要です。

歯列矯正治療を受けている患者の歯垢の増加

歯列矯正治療を受けている患者は、固定式または着脱可能な器具を歯に装着しているため、歯垢が付着する表面が増えます。さらに、これらの患者は口内の歯垢蓄積レベルが高くなっています(Marda, 2018)。歯磨きとフロスの使用にかかる時間も長くなります。偶然に残ってしまった歯垢は、ブラケット、ワイヤー、アライナー、および歯の間に蓄積し始めます。これらすべての要因が組み合わされて、特に食事の後で毎回矯正装置を衛生的に保つために悪戦苦闘しなければならない理由となります。

矯正装置を取り付ける前に歯肉の問題に悩まされたことがある場合は、固定式の器具を付けるよりも、着脱可能なアライナーを依頼した方がよいかもしれません(Jiang, 2018)。

歯磨きとフロスの使用の際の出血

歯列矯正治療を受けている患者のほとんどが最初に気付く3つの症状は、歯肉の腫れ、後退、および出血です。歯肉に沿って歯磨きをすると、出血のために歯ブラシがピンク色になったり、口をゆすいだ水に血が混じったりすることがあります。

出血は、歯磨きやフロスの使用で力を入れすぎているのではなく、歯磨きやフロスの使用の頻度が十分ではないことを意味します。歯垢の除去は面倒なものですが、しっかり行えば、歯肉炎が治り始めて、症状も収まり始めます。

適切な口腔衛生の習慣を守る

毎日の口腔衛生習慣を見直して、再評価するには、今すぐ実行することが最も重要です。念入りなクリーニングは、歯肉にとって良いだけでなく、矯正装置を付けている間に歯のシミやむし歯ができるのを防ぐ効果があります。

歯磨きは一日に2回 — 歯垢の蓄積と歯肉炎を防ぐには、必ずすべての歯の表面をしっかりと磨く必要があります。これを行う最善の方法は、一日に2回、1回あたり2分以上かけて歯のシミをきれいに取り除くことです。

歯を磨くときは、一度に1、2本の歯に集中し、歯垢がたまる歯肉の縁の部分とブラケット/ワイヤーの周辺に、特に注意を払ってください。

電動歯ブラシを利用する — 電動歯ブラシは、毛先が高速で反復運動をするため、手で磨く場合より多くの歯垢を取り除くことができます(Erb, 2018)。また、電動歯ブラシは基本的にブラシを持って歯に当てるだけで自動的に磨けるため、子供や手が不自由な人にとって便利です。

毎日の口腔衛生手順にフロスの使用を含める — 歯肉炎は歯肉線で発症するため、歯肉疾患の進行を止めたり、予防したりするには、この部分を衛生的に保つことが極めて重要です。フロス通し器を使い、歯列矯正ワイヤーのすぐ下にフロスを通して歯に当てて、歯肉の縁のすぐ下まで上下に数回滑らせます。歯肉の上にフロスを引き上げて、次の歯に移動して同じプロセスを繰り返します。

矯正装置の周囲をフロスでクリーニングするにはある程度の時間がかかるため、代わりにウォーターフロッサーを使う人もいます。固まっていないバイオフィルムを取り除くには、どちらも効果があります。

リステリン®の使用を怠らない — 歯磨きの後で、歯肉の健康のためにマウスウォッシュを使用します。歯ブラシが届きにくいエリアに残っている細菌を一掃し、傷んだ歯肉を素早く治すことができるよう、一日に2回、歯磨きをしてフロスを使った後でマウスリンスを使用してください。

6か月ごとに歯のクリーニングを行う — 歯肉炎の部位によっては、歯肉の縁に沿った部分もしくはそのすぐ下の部分で石灰化した歯石が原因となることがあります。歯石は歯磨きやフロスの使用では除去できないため、歯科医が特別な器具を用いて歯から歯石を慎重に取り除く必要があります。新たにクリーニングを行った部分は、当初は軽い炎症や過敏症が起こることがありますが、毎日、適切な口腔衛生手順を怠らなければ、簡単に維持できます。

矯正装置を外した後も歯肉炎が治らない

矯正装置を取り付ける前は歯肉に問題がなくても、歯列矯正器具を付けている間に生じた口腔衛生の問題が、器具の取り外しによって解消されるわけではありません。軽度の歯肉炎が、時の経過とともに悪性の歯肉疾患に進行するのはよくあることです…そしてこれは、成人の歯の喪失の主な原因でもあります。歯列矯正治療を受けている間に、適切な口腔衛生の習慣を身に付けることにより、その後数年間、数十年間にわたって笑顔で健康に過ごすことが可能になります。

歯肉の問題が歯肉炎から悪性の歯周炎に移行したか否かは、どうすれば分かるでしょうか?以下に挙げる症状が表れた場合は、歯科医に伝えてください。

  • 歯肉の後退
  • 口臭症(口内の悪臭)
  • 歯のぐらつき
  • 重度の歯石の蓄積
  • 歯磨き、フロスの使用、口のすすぎを3~4週間続けても改善しない出血
  • 歯と歯肉の間に食べ物が挟まる問題

歯科医の診察を受けるべきとき

一部の患者ではごく稀に、歯列矯正器具によって引き起こされたアレルギーや身体外傷が原因で歯肉に重篤な反応が起こることがあります。口腔衛生の習慣を改善して3~4週間経過しても歯肉炎の症状が改善しない場合は、歯科矯正医または歯科医に相談すべきです。

自宅での適切な口腔衛生習慣、専門家による定期的なケア、および適切な口腔衛生用品の利用により、歯列矯正治療の最中と治療後に健康で美しい歯を維持することができます。治療が終わった後で、健康で美しい歯が輝く素晴らしい自分の笑顔が鏡に映っているのを見れば、矯正装置を付けている間、歯と歯肉の健康を保つために費やした時間が無駄ではなかったことが分かるでしょう!

References

Zhao, L.; et. al.; Relationship of orthodontic treatment and periodontal soft tissue health. Hua Xi You Qiang Yi Xue Za Zhi; Dec 2018.

Cerroni, S.; et. al.; Orthodontic fixed appliance and periodontal status: a systematic review.; Open Dent J.; Sep 2018.

Marda, A., et. al.; Evaluation of changes in cariogenic bacteria in a young Moroccan population with fixed orthodontic appliances.; Int J Dent; Nov 2018.

Jiang, Q.; et. al.; Periodontal health during orthodontic treatment with clear aligners and fixed appliances: a meta-analysis.; J Am Dent Assoc; Aug 2018.

Erbe, C.; et. al.; A randomized clinical trial to evaluate the plaque removal of an oscillating-rotating toothbrush…; Angle Orthod; Dec 2018.