ブレース/虫歯への対処法

矯正装置を付けている場合のむし歯への対処法

矯正装置を付けると、むし歯になる可能性が高くなりますか?

矯正装置がむし歯を引き起こすわけではありませんが、人によっては、矯正器具を使用しない場合よりもむし歯を発症しやすい環境になることがあります。

この問題が生じるのは、歯に恒常的に取り付けられているブラケットとワイヤーの周囲に蓄積する歯垢が原因です。食べ物と細菌が付着する表面が増えるため、衛生的に保つのが難しくなります。適切な口腔衛生の習慣を実行しなければ、口内のあちこちにむし歯ができる恐れがあります。

最もむし歯になりやすいのは、各ブラケットに直接接している部分です。しっかりとクリーニングしなければ、この部分のエナメル質が脱灰され始めます。むし歯のこの進行段階で矯正装置を外すと、歯の表面に白い斑点ができているのが見られます。色は白ですが、この部分は脆弱になっており、崩壊過程の第一段階に入っています。口腔衛生を改善しなければ、この白い斑点は茶色くなるか、むし歯の空洞部分になります。

歯列矯正治療中の歯科治療(詰め物)

ほとんどの歯科医と歯科矯正医は、進行中のむし歯がある患者に矯正装置は装着しません。しかし、歯列矯正治療を受けている間にむし歯になった場合は、隣接した部分にむし歯が広がる前に詰め物をしてもらう必要が生じます。

ところが、歯列矯正器具があると邪魔になり、歯科医が歯の治療を行えません。例えば、ブラケットやワイヤーがある場合は、まず歯科矯正医の診察を受けて、ブラケットとその上に取り付けられているワイヤーを外してもらう必要があります。その後、必要な歯科治療のために歯科医の診察を受けます。そして、詰め物の処置の後でもう一度歯科矯正医の診察を受けて、矯正器具を元どおり付けてもらいます。通常、この手順はすべて一日で行われます。

むし歯の原因となる一般的な食品

矯正装置を付けている場合は、器具に引っ掛かったり、器具を外してしまったりする特定の食べ物を避ける必要があることが分かっています。例えば、粘り気のあるキャンディー、カリカリのナッツ類や、歯に使われる接着剤に反応する可能性がある酸性食品です。

しかし、特に歯列矯正治療を受けている患者の場合、むし歯になる可能性を高める恐れがある食べ物や飲み物もあります。でんぷんなどの歯垢の蓄積を促進するものや酸生産を促進するものはすべて健康な歯のエナメル質の浸食を早める可能性があります。

液体は歯と矯正装置の周辺部分全体に付着し、その成分が接触する表面が非常に広いため、むし歯の発症に関しては特に危険です。水以外のあらゆる飲み物、特にジュース、ソーダ、ダイエットソーダ、スポーツドリンクはむし歯を引き起こす恐れがあります。特にスポーツドリンクは、むし歯の進行を劇的に早めることが分かっています(Søvik, 2015; Maeda, 2014)。非常に多くの若者がスポーツ活動の際にこの種の飲み物を飲むため、矯正装置を付けている間にむし歯になる可能性がさらに高まります。

矯正装置を付けている間、または矯正治療が終わった後で取るべき最善の方法は、フッ素が添加された水道水を飲んで水分を補給することです。水は歯の健康に良いばかりでなく、日中にできる過剰な酸と歯垢を洗い流すのにも役立ちます。

矯正装置を付けている場合のむし歯予防

歯列矯正治療を受けている患者は、治療中の口腔衛生に特に細心の注意を払う必要があります。口内には自然の細菌がいるため、お菓子、酸味のあるものやでんぷんが比較的少ない食生活の場合でも、むし歯になることがあります。

初期段階のむし歯は完治可能であり、これは良い情報ですが、歯の表面のエナメル質の層がゆっくりと崩壊し始める初期の脱灰の段階で治療した場合に限られます。

以下は、対策を開始するためのヒントです。

補助的なフッ素入りマウスウォッシュを毎日使用する。。フッ素は、歯と骨を丈夫にする天然鉱物です。むし歯の「リスクが高い」と見なされる患者の場合、歯科矯正医や歯科医は市販の製品より強力なものを処方する場合があります。それ以外の場合は、市販のフッ素入りマウスウォッシュを使えば問題ありません。必ず一日に2回、歯磨きの後で使用し、その後30分以上は食べ物や飲み物を口にしないでください。

良質な歯ブラシを使用する。電動歯ブラシを使うことができれば、高い効果が期待できます(Erbe, 2018)。通常の歯ブラシの場合は、歯に優しくて柔軟性があり、歯列矯正器具全体をクリーニングできる、毛先の柔らかい歯ブラシを選びましょう。

必ずフロスを使用する。どれほど素晴らしい歯ブラシでも、歯と歯の間をきれいにすることはできません。フロスを使用して酸と歯垢を物理的に取り除く必要があります。これを行うには、ワイヤーの下や狭い空間にも届くフロス通し器またはウォーターフロッサーが必要です。理想的には、歯と歯の間と、歯肉炎が発症する歯肉の縁のすぐ下の部分の両方をフロスでクリーニングしてください。

矯正装置を付けるとむし歯のリスクが低下しますか?

多くの口腔衛生専門家は、歯列矯正治療を受けると、治療後にむし歯になるリスクを低下させるのに実質的に役立つ可能性があることを示唆しています。叢生歯と捻転歯は、正常に並んだ歯よりむし歯になる部分ができる可能性が高いため、矯正装置での治療は、将来的にむし歯から歯を守るための優れた方法となる場合があります(Cernei, Maxim, Zegan 2016)。

少なくとも年に2回、歯科衛生専門家による診察を受けて、綿密なクリーニングや検査、スクリーニングでむし歯のリスクがある部分を正確に見つけましょう。

References

Søvik, J.; et. al.; Sour sweets and acidic beverage consumption are risk indicators for dental erosion.; Caries Res., 2015.

Maeda, Y.; et. al.; Mouthguard and sports drinks on tooth surface pH.; Int J Sports Med; Sep 2014.

Erbe, C.; et. al.; A randomized clinical trial to evaluate the plaque removal of an oscillating-rotating toothbrush…; Angle Orthod; Dec 2018.

Cernei, E.; Maxim, D.; Zegan, G.; The study of the association of decay risk with malocclusions in mixed dentition children from northeast Romania. A transversal retrospective study.; Rev Med Chir Soc Med Nat Iasi.; Oct 2016.